【結婚式の物語】 手放しおじさん
手放しおじさんとは。
自転車のハンドルを掴まず 両手を手放して 得意げに運転する叔父のことである。
子供がやるのはわかる。 【危ないからやめなさい!】と親に怒られてしまう行動。
でも手放しおじさんはもういい大人だ。
怒る側なのに なぜか子供達にはその行動が格好良くみえて
チヤホヤされていた。
私が家に遊びに行くたびに 手放しおじさんはそれを披露する。
【おじさんは特別な訓練を受けているから真似しないように。】
真似したくても出来ないよ、特別な訓練てなんだろ・・・。
結局。
なんでそんなことをしていたのか。
モテたいのか。目立ちたいのか。なんなんだろう。
つい最近知ったこと。
それは私がなかなか自転車に乗れなかった5歳のとき。
転んで転んで もう自転車なんていらないと思っていた。
そんなとき 公園の奥から登場した手放しおじさん。
【おじさんっ!すごいねっっ!!】
あの光景は今でも忘れない。
母から聞いたこと。
私と遊びたいけど 何をしてよいのかわからない。
絵も描けない。お人形もない。かくれんぼもすぐに見つかる。
女の子はむずかしい。ただひとりの姪っ子。
ようやく私が喜んだこと。
手放し自転車おじさん。
親でも兄弟でもない。
私が自転車に乗れるようになったのは
手放しおじさんのおかげ。
これからは手放ししないで自転車に乗ってね。
今日の結婚式には
ちゃんとバスに乗って
気を付けて来てよね。おじさん。