親子の関係はそれぞれ。

ウチの母と祖母は親子というより
飲み仲間。

お酒好きな二人は　休みの日は夕方にもなれば
夕食の準備をしながら　楽しそうに二人で缶ビールをのみながらワイワイしている。
母が小さい頃の話はあまり聞いたことがないけれど、
祖母は一生懸命仕事をしていて参観日とかは
来た事・・・「1回、2回?あったかな～?」
と母が昔言っていたのはなんとなく覚えている。

今は女性も働く時代で、そういう家庭も多いと思うが当時は珍しかったらしい。

私が生れてからは母は祖母の事を“ばば”と呼んでいたが
私が生れる前はちゃんと“お母さん”って呼んでいたみたいだ。
私はというと“お母さん”や“ママ”ではなく
“カカコ”と呼んでいた。

由来は覚えていないが　おそらく
“母さん”と　女性の名前につくことが多い“子”で“カカコ”。
小さい頃からカカコは母親という役目より
女性として色々と話せる粋なお姉さんというポジションだった。

仕事大好きカカコは毎日、朝から夜遅くまで仕事。
もちろん、学校行事にはり来ない。

私が寝てから帰宅もしばしば。
朝になるとカッコイイ、ビジネススーツを颯爽と着こなし会社へ・・・
そんな毎日。

保育園の頃は預けられたりすることが寂しかったり
悲しかったり　熱を出してもすぐ帰ってこれず
ばばに看病をしてもらっていた。

単純に寂しかったりもしたけれど、幼稚園の年長になった頃には
慣れていたし
「男の子とケンカしてやられたぁぁ～」と泣きながら帰ったら
「やりかえしておいで！」と　幼稚園生に向かって本気でそんなことを言う・・・(笑)

そんなカカコがかっこよく思えていた。

小学生になると「モテる服買いにいくかっ?！」と
たまに家にいる休みは、お姉さんと買物に行くようで
ワクワク楽しかった。
今考えると・・・小学生にモテる服って・・・(笑)

バレンタインが近くなると「好きな子誰?リサーチしてその子が好きなお菓子作るぞー！！」
と言って毎年、お菓子作りを一緒にした。

とても楽しかった。

中学生になっても、そのスタンスは変わらずなんでも話せる仲だった。

成人してからはカカコとよく飲みに行ったりもした。
私の仕事の話し、カカコの仕事の話し。私の恋愛の話し。
話題はつきなかった。

今まで、たくさんのワガママを言わせてもらった。
でも反対されたことはなかった。
母親って「あれダメ！これだめ」と言うものなのでは・・・。なんでだろう。

彼を紹介した時も、友だちに彼を会わせたみたいにフランクに話しをして
すぐに受け入れてくれた。

そんな私の結婚式。

カカコが泣いたのを初めてみた。
鼻を真っ赤にして、目も真っ赤にして。
シーンごとに泣いていた。

私の前ではサバサバした粋なお姉さんだったカカコがこんなにも
感情を表にだして表現するカカコにびっくりした。

挙式が結びになりパーティー会場に到着して
控室に入ると、すぐにカカコが来た。

「すごく、綺麗だったよ。」

息を詰まらせながら、言った一言。

「ありがとう」と。

おめでとうではなくて、ありがとうだった。

カカコは話しを続けた。

母親らしいこと、全然できなくてごめん。　と。
大好きな仕事をめいっぱいさせてくれて、ありがとう。
寂しい想いたくさんさせて、ごめん。
こんなに素直な立派な女性になってくれて、ありがとう。
小さい頃熱がでたとき側にいれなくて、ごめん。
こんな母親なのに、何でも話してくれて、ありがとう。
こんな日がくるなんて。たくさん痛かったけど、頑張ったかいあった！
生れてきてくれて、ありがとう。

ごめんとありがとう　それを、たくさんくりかえした後。
そしてカカコらしく「超キレイっ」とグッとマークを親指で表現して
控室を後にした。

今まで私の意見を全て真っ直ぐ尊重してくれたのは
こんなにたくさんの、私が知らない想いがあったからなのかもしれない。

たった5分ぐらいの時間だったけれど親子としてすごした28年間の
カカコの全ての想いがわかった気がした。

育てるために一生懸命働いたり、辛いことがあってもそんな表情ひとつ見せず
冗談ばかり言っていたカカコ。大変だったんだろうな。

テレビに出てくるお母さん像とは全然違うけれど
私はカカコが大好きで、感謝でいっぱい。
ちょっぴり珍しい親子だけど、尊敬できる“親”

今日は今まで照れくさくて伝えられなかった想いを言葉にしてみよう。
結婚式という特別な日にだからこそ、伝えよう。

お母さん、ありがとう。