【ウエディングSTORY】このひとと、あるいてく
結婚式が決まってから、彼とのケンカが増えたのは、
絶対に気のせいなんかじゃない。
ご両親へのお手紙 という、
結婚式の一番の見せ場をこれから書くという 結婚式の前日でも、
彼はどこかに飲みに行ってしまった。
「前夜祭」だとか言って。
真っ白な便箋を前にして考える。
思えばこの結婚式の準備中
彼はなーんにも手伝ってくれなかった。
印刷物のデザインや、パーティーの進行も、特別な演出も。
「プロに任せる方がいいに決まってる」と言って、 プランナーさんまかせ。
担当のプランナーさんには何度泣きついただろう?
このお手紙だって彼と一緒に考えたかったのに。
「やりたいようにしなよ。」
って言えばいいと思ってる!絶対。
この3か月で何回言われたかわからない。
こんな気持ちで感謝の手紙なんて書けない。
みんなが泣いちゃう花嫁の手紙、けっこうプレッシャーなのに。
この間の牧師先生とのカウンセリングで、
先生と奥様が、夫婦喧嘩は次の日に持ち越さないのか
円満の秘訣だって教えてくれた。
「僕は持ち越すつもりないんですけどね」と言うところも気に入らない。
この準備期間のこと、思い返していたら 彼のお母さんから電話。
明日のお母さんの着付けの時間とか、話しているうちに
ついつい悩み相談。
私の救いは彼のお母さんがずーっと味方でいてくれたこと。
いろいろこの何か月かの愚痴を聞いてもらってたら、
お母さん 大笑い。
「したいようにさせてあげなさいって私が言ったのよー」って。
「結婚式は女の子の夢だから、男のあなたが口出す事はないからねって言ったの~
そんなに大変な思いさせてたなんて。ごめんね。」
そして初めて教えてくれた
「あの子は昔から、ワクワクしたり、ドキドキしたりすればするほど
恥ずかしくって 逆のことするの。好きな子にわざと意地悪するみたいにね。」
「きっと誰よりも楽しみにしてるのはあの子よ、きっとね。」
電話を切って考えた。
そういえば、結婚式の準備で、
私の思い通りにならなかったことはひとつもなかった。
フィニシングスクールで覚えたことの練習も、ずーっと付き合ってくれたし、
挙式の誓約文も、一緒に暗記してくれた。
予算だって、見積りを見て黙り込んだことはあっても、ダメとは言わなかった。
彼は、なんにも文句なんて言わなかった。
私の方がグチグチいってばっかり。
失敗したらどうしよう、ちゃんと正しくできなかったらどうしようと
心配ばかりする私に、
「誰の結婚式なの?ちゃんとって何?正しいって誰が決めるの?」と
言われたことを思い出した。
そうだよね。私たちの結婚式だもんね。
私たちが楽しまなきゃね。
やっとわかった。
なんだか急に 彼に謝りたくなった。ありがとうも言わなきゃ。
お母さんが最後に言ってた
「きっと明日、あの子の方が緊張してるから見てごらん。
ずーっと落ち着かなくてソワソワしてるはずだから。」
結婚式が終わって、ヘアメイクさんがこっそり教えてくれた。
ご新郎様がどれだけ緊張していたか、
持ってた白い手袋が、一番知ってるはずですよ。
しわくちゃで、汗でびっしょりでしたもん って。
ご褒美ビール、買って帰ろ。